サンタ・バルバラ城(Santa Barbara)から眺めるアリカンテ
長時間のフライトを乗り越え、辿り着いた街はアリカンテ(Alicante)という小さな港町。スペイン東部、バレンシア州以南の地中海に沿う海岸線コスタ・ブランカ(Costa Blanca、和名で白い海岸と言います)の玄関口として、観光客に人気のリゾート地です。その名の通り美しいビーチが広がる魅力的な都市。
この町での生活を始めて三か月※1が経ちました。
ここスペインでは、留学生全般が主に三つの宿泊オプションからステイ先を選びます。現地の家族と共に生活できるホームステイ、現地の学生も多く利用する学生寮、そしてピソ(Piso)と呼ばれるシェアフラット、つまりアパートの一室を数人でシェアするハウスシェアリングがあります。どの選択肢にも利点はありますが、私はピソを選びました。スペイン人に限らず様々な国の学生と交流が出来ることと、完全自炊で比較的安価なことが決め手でした。
ランチ時のバル通り
ルセロス(Luceros)というアリカンテの中心街の、バルが何軒か立ち並ぶ大通りに住むことが決まりました。昼間からビールを片手におじさま方が談笑していて、ギターの音色や歌声も聞こえるにぎやかなところです。トラム※2(TRAM)の駅が徒歩5分の立地にあり、スーパーや銀行も遠くないため住みよい環境です。そして何と言っても、歩くこと10分で地中海を一望できるのです!最初に大家さんに家を案内された際、バルコニーからちらりと覗く、日本とは違う色をした青い海に、興奮を隠せませんでした。「これから毎日、この景色と生きるんだ」と心が躍った感覚を今でも鮮明に覚えています。この日から私の地中海生活が始まりました。
ポスティゲットのビーチ(Playa de postiguet)
ルームメイトも温かく私を迎え入れてくれ、週末はプラヤ(Playa)※3に行こうと誘ってくれます。ここアリカンテでは、学生の楽しみといえば週末にプラヤで日光を十分に浴びながら、友達とおしゃべりすること。肌の白さを命としがちな日本の女子大生である私には、「わざわざ太陽の下で半日もおしゃべりするの?それなら家ですればいいのに……」と抵抗がありました。それに、「まだ3月なのに、水着を着るの?」と、不思議に思う気持ちもありました。ですが、行ってみて納得。まだ春であることを感じさせない太陽の熱と多くの人の熱気のなか、砂浜で寝そべってたわいもない話をすることは、とても、とても贅沢な時間に思えました。週末はプラヤで過ごし、確実に陽に焼けて日本へ帰ることになりそうです。この時期はまだ初春だったので人もまばらでしたが、夏になるとこの白い砂浜が人で見えなくなるくらいに観光客が訪れるそうです。それもそのはず、ここアリカンテを含む地中海沿いの都市はヨーロッパでは有名なリゾート地。多くの観光客が美しいプラヤでの素敵なひと夏を求めてやってきます。
夕暮れのルセロス(Luceros)
夜のお楽しみはもちろんお酒とタパス。そして週末は夜遅くまで(明け方まで!)ディスコ※4で踊ります。日本の学生にとって、「ディスコ」と聞くと何となく近寄りがたい、大人で少し危険な場所のように感じますよね。けれど、スペインではディスコは若者の大切な社交場。店内はほとんど20代です。アップテンポの音楽が流れる店内で、みんな楽しそうにお酒を飲み、踊り、おしゃべりしています。誘い合わせる必要はないのです。行けば仲間がいるし、その場で友達を作ることもできる。そんな場所がスペインのディスコかなと感じています。私も最初は、「知り合いもいないのに、行って楽しめるのかな……」と縮こまっていましたが、全く問題なく溶け込めました。ディスコは18歳以上なら基本入場可能です。また、チャージ(入場料)も必要ありません。そのため、飲み物を頼まなければ無料で踊って楽しめる場所になっています。これも学生が集まる理由のひとつです。スペインに住む学生たちは、ディスコに行くことを毎週末心待ちにしています。それは映画や買い物に行くよりずっと安価で、ずっと楽しいからだそうです。
楽しい、が大好きなスペイン。そしてまだたくさん「素敵」を持っているアリカンテ、続きはまた後ほどに。
※1 月数は記事執筆当時のものです。
※2 トラム……路面電車のこと。各都市によって交通手段は様々ですが、アリカンテではこのトラムと市内バスがあります。どちらもタム (TAM)という会社が運営しており、ゾーンごとに切符の値段が異なります。また両方で使用できるチャージ式カードや学生カード、観光用などもあります。
※3 プラヤ……海水浴場(ビーチ)のこと。プラヤは大きな主要ビーチのことを指し、いつも多くの人で賑わっています。比較的小規模で人も少ない、入り江のような場所は、カラ(Cala)と呼ばれます。アリカンテの主要なビーチは2つ、ポスティゲット(Postiguet)とサンフアン(San Juan)です。中心街のすぐそばにある、ポスティゲットの写真を記事に掲載しています。
※4 「ディスコ」はスペイン語ではDiscoteca(ディスコテカ)といいます。ディスコテカにも種類があり、レゲエ音楽やジャズメインのものから、少し年配者向けのものまで様々。老若男女関係なくこういった環境を楽しめるのも、スペインの雰囲気ならではなのかもしれません。ディスコテカやバーが立ち並ぶ通りはBarrio(バリオ)と呼ばれ、いつも多くの人が集っています。
ライター:NANA
東京都八丈島出身。趣味は読書とお散歩で、旅行雑誌を読んで行った気分になるのが好き。スペインの好きなところは、一瞬一瞬を楽しむことに全力を注ぐスペイン人の生き方と、美味しい食べ物。スペインのアリカンテ大学(バレンシア州)への留学体験記を執筆中の、フラメンコを踊れるライター。
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