これまで11回にわたり、料理というテーマで世界を旅してきたこのコラム。最終回となる今回は食の宝庫・ベトナムへ皆様をご案内します。
北部生まれの麺料理・フォー
ベトナムのヘルシーな麺料理として、日本でも大人気のフォー。有名な料理ではありますが、実は誕生してから約100年と比較的歴史の浅い料理です。フォーの起源は一説によると、フランス統治時代、北部・ナムディン省で食べられていた工場のまかない飯がはじまり。紡績工場で、フランス人労働者が食べていた牛肉と野菜の煮込み料理をベトナム人が気に入り、麺を入れてアレンジしたのが原形だそう。
その後、フォーは北部から首都のハノイを経由し、1950年代にはベトナム南端のサイゴン(現在のホーチミン市)へ。牛肉を鶏肉で代用するなど、アレンジを加えられながら、少しずつベトナム全土に広まっていきました。
「フォー」という名前は、フランスの家庭料理「ポトフゥ(Pot au feu)」の「フゥ(feu=炎)」が語源だと言われています。
ところで、日本ではよく「トムヤムクンフォー」という料理名を耳にすることがあるかと思いますが、これは酸味と辛さが特徴的なタイのスープ・トムヤムクンとベトナム料理のフォーを合体させたアレンジレシピ。二つの国の代表的な料理をいいとこどりしたこの一品もぜひ試してみてくださいね。
フォーの発祥地・ベトナムってどんなところ?
インドシナ半島の東部に位置するベトナムは、南北に細長く、北端から南端まで、1650キロメートルもあります。地域によって気候が異なるため、食文化も場所によってさまざま。北部ではさっぱりとした味付けが好まれる一方、南部では比較的甘い料理が多いです。
そんなベトナムの有名な観光地といえば、世界文化遺産に指定されているハロン湾。この美しい湾内では、2~3億年前に形成されたといわれる小さな島々が防波堤の役割を果たしており、穏やかに広がるベトナムの海の風景はまるで絵画のよう。伝説や昔話が数多く伝わる洞窟も残っており、ベトナムに暮らす人々と自然とのつながりを感じることができます。
ハロン湾
少数民族が暮らすサパという山岳地域は、ベトナム国内で唯一雪が降る地域としても有名です。ファンシーパン山が堂々とそびえ、トレッキングのスポットとして人気を集めています。毎週日曜日に開かれる、伝統的な民族衣装を着た人々が集まる市場も必見。華やかな色彩、人々の活気あふれる声、フォーの芳しい香り――ベトナムの文化を五感すべてで感じてみてはいかがでしょうか。
食事は、ただ「美味しい」を楽しむだけでなく、その土地に暮らす人々の歴史や生活を感じることができるもの。このコラムを通じて、皆様が少しでも各国の雰囲気を感じられたら嬉しく思います。気軽に海外へ旅行に行ける日はまだいつになるかわかりませんが、このコラムでご紹介した国を訪れるときには、ぜひ本場の味も楽しんでくださいね。
[Reference]
「ベトナム料理は生春巻きだけじゃない」足立由美子・伊藤忍・鈴木珠美著 柴田書店
一般社団法人日本エスニック協会「地域によって違う、特色あるベトナム料理」(閲覧:2021年11月11日)
駐日ベトナム社会主義共和国大使館(閲覧:2021年11月11日)
ベトナム観光総局オフィシャルサイト「サパ」(閲覧:2021年11月11日)
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