¡Hola!(オラ!)こんにちは。今回がアリカンテ留学体験記の最終回となります。前回までは、アリカンテでの自身の体験からスペインの宗教事情に至るまで、たくさんの情報をお届けしてまいりました。今回は私がスペイン滞在時に巡った様々な場所の中で、特にお気に入りの地を写真でご紹介いたします!
アリカンテに限らず、スペインは本当に景観が美しいです。歴史を感じる建造物、ふとした瞬間に見る自然、賑わう街角のバルなど、皆様もぜひお気に入りを見つけていただけたらなと思います。
アルテア(Altea)/カルぺ(Calpe)
白い町・アルテア
まず一枚目は、アリカンテ滞在中、初の小旅行で訪れた町アルテア(Altea)です。アリカンテからトラム(TRAM)に乗って片道2時間ほどで行くことができます。ここは別名「白い町」と呼ばれ、町中の建物が、地中海沿いによく見られる白を基調とした石灰でできています。スペインでは、ミハス(Mijas)というアンダルシア地方の村が、白い村としてよく知られていますが、実はアリカンテにもアルテアという美しい町があることをぜひ知っていただきたいです。
私がアルテアで特に感動したのは、この透明すぎる海の色……!アリカンテ市内のビーチは砂浜なので、気候や海水浴の影響で水が濁る日も多々ありますが、アルテアの海は底が砂利のため、ほぼ1年中綺麗なままです。「息を呑む」という言葉は、この光景を見た時のためにあるのだと思うほど、美しかったです。
アルテアの海
アリカンテ県内にあるカルぺ(Calpe)という町もお気に入りのひとつ。カルぺは小さな町ですが、大きな岩山が有名で、ロッククライミングや登山の愛好家にとても人気です。頂上まで登るには登山用具を要し、熟練者でないと登頂は厳しいかもしれませんが、中腹まで登るだけでも十分美しい景色を望めます。カルペにはアルテアと同じく、トラムで行くことができます。
登山中の崖からの景色(カルぺ)
バレンシア(Valencia)
シウダッド・デ・ラス・アルテス・イ・ラス・シエンシアス(Ciudad de las Artes y las Ciencias:芸術科学都市)
続いては、Vol.4のラス・オゲラスのときに紹介したアリカンテのお隣・バレンシア(Valencia)です。以前、三大祭りのラス・ファリャスが開催されるという説明をしましたが、ここバレンシアはスペイン第3の都市※1と呼ばれる大都市としても有名です。
バレンシアを多くの人が訪れる理由は、近未来を思わせるこの写真の芸術科学都市をはじめとした、建築美術の町であるためです。芸術科学都市は、バレンシアが誇る著名な建築家が中心となって設計した、自然・科学・芸術をテーマとする複合施設です。敷地内には、博物館やオペラハウス、水族館、プラネタリウムまで様々なレジャー施設が揃っています。
チュロス・コン・チョコラテ(Churros con chocolate)とオルチャータ(Horchata)とファルトン(Farton)
アリカンテを含むバレンシア州には、コラム「世界のお料理旅」第1回にも登場した、あるローカルドリンクがあります。それがこのオルチャータ(Horchata)です。オルチャータは、チュファ(Chufa:カヤツリグサ)の地下茎をすりつぶし、砂糖やシナモン、水を加えてドリンク状にした飲み物です。スペイン全土でも見かけることはありますが、特によく飲まれているのがバレンシア州で、夏の到来を告げる飲み物として長く愛されています。日本人には馴染みのない独特の風味があり、ある人は「アーモンドミルクのよう」、またある人は「土の味」など、オルチャータへの意見は様々。バレンシア州に訪れる際はぜひトライしてみてください(私は好きでした)!
また、スペインの朝ごはんといえば、チュロスとホットチョコレートが定番ですが、バレンシアではオルチャータと一緒にファルトン(Farton)という砂糖がまぶされた甘いパンを食べるのがおきまりだそうです!ぜひセットで頼んでみましょう。
セビージャ(Sevilla)
プラサ・デ・エスパーニャ(Plaza de España:スペイン広場)
こちらはVol.5でご紹介した三大祭りの1つ、フェリア・デ・アブリル(Feria de abril)の開催地、セビージャ(Sevilla)です。フェリアの時期だけでなく、セビージャは古く美しい町として、そして明るく陽気な人が多く住んでいる場所として、国内外問わず大人気の観光地です。その独特の雰囲気から「セビージャは特別な色を持っている」といわれるほど。
その中でも、私が特にお勧めしたいのがこのスペイン広場です。町のやや南側に位置し、周りを緑と自然に囲まれた中にこの広大な広場があります。映画のロケ地としても有名で、スター・ウォーズシリーズでも用いられました。広場の中には、アンダルシア地方特有のタイル細工で作られたスペイン全自治体の歴史画や地図などがずらっと並んでいます。
セビージャは私がスペインで一番好きな都市なのですが、別名「スペインのフライパン」と呼ばれるほどの灼熱地帯です。特に夏場の日中は、外を歩くと命に関わるほどの暑さになることもあるので、朝方や日が陰り始めたあとに行動するなど、体調管理には注意して楽しみましょう。太陽が照り付け、陽気な人々が歌い、フラメンコがいたるところで踊られる、スペインのイメージを凝縮したような情熱溢れる町、それがセビージャです!
グラナダ(Granada)
ラ・アルハンブラ(La Alhambra:アルハンブラ宮殿)の内部
続いてご紹介するのは、イスラム教とキリスト教のかつての決戦の地・グラナダ(Granada)です。スペインがイスラムの支配を受けていた頃、イベリア半島のキリスト教徒は国土を取り戻すべく、レコンキスタ(Reconquista)※2を開始しました。ここグラナダは、レコンキスタによって次々と領土を失っていたイスラム軍にとって最後の砦でした。スペインの中でも、特にイスラム建築やアラブ文化が色濃く残る町で、今も旧市街には多くのアラブ系の人々が居住しています。
こちらの美しい写真は、グラナダのシンボルであるアルハンブラ宮殿の中庭です。アルハンブラ宮殿は、イスラム時代の王の居住地として作られ、また政治や行政の拠点でもありました。宮殿内は、水と緑のコントラストを基調とした、自然と建物が調和する作りになっているのが特徴です。それぞれのサラ(Sala:部屋)やパティオ(Patio:中庭)には違った用途があり、昔の王族の暮らしぶりが伺えます。豪華すぎる内装に思わずうっとりしてしまいます……。
アルハンブラ宮殿から見下ろすグラナダの町
アルハンブラ宮殿に入場するには事前予約が必要です。1年を通して非常に混みあっており、入場制限もあるため、ウェブサイトを確認して予約しましょう。また、グラナダはアンダルシア地方なのでフラメンコはもちろんのこと、バルの文化も栄えています。ワンドリンク頼むと、無料でタパスがついてくるというグラナダ風サービスが充実していて、夜はかなりにぎやかです。セビージャ同様に夏場の日中は危険な暑さを伴うので、夕方から夜にかけてが散策しやすい時間帯です。
タパスのサービス(なんとこれ、ドリンク以外すべてサービス品です!)
サン・セバスティアン(San Sebastián)
一面に広がるブドウ畑
続いては、美食の町として高い注目を集める、バスク地方のサン・セバスティアン(San Sebastián)です。サン・セバスティアンでは、日本でも大人気のバスクチーズケーキやバル巡りが楽しめます。一方、市街地から少し離れると、このブドウ畑のような果樹園が広がります。バスク地方ではチャコリ(Chacolí)というスパークリングワインがよく飲まれていて、このブドウ園の写真はチャコリのワイナリー見学に訪れた際のものです。
私が滞在していたアリカンテは、白く乾いた町並みが印象的でしたが、バスク地方を含むスペイン北部はこのように緑が多く、湿度の高さを感じることができます。スペインの違った顔をみることができて、非常に勉強になりました。
また、さすが美食の街だけあって、バルのタパスは最高でした!すっきりした風味のチャコリと共に、バスクの美食もお楽しみください。
マドリード(Madrid)
プエルタ・デル・ソル(Puerta del sol:太陽の門)のある日の夕暮れ
続いては、スペインの首都・マドリード(Madrid)です。マドリードの名所は徒歩で回れるように配置されているため、とても観光がしやすく、多くの観光客が溢れています。人口が多いマドリードでは、スペインでは珍しく※3地下鉄が整備されています。もし歩き疲れてしまったら、地下鉄の標識を探してみてください。赤いひし形の中に、『メトロ(Metro)』と書いてあります。
また、マドリードでは芸術が非常に盛んです。スペイン最大の美術館、ムセオ・デル・プラド(Museo del Prado:プラド美術館)や、あのピカソの名作『ゲルニカ(Guernica)』が展示されるムセオ・ナシオナル・セントロ・デ・アルテ・レイナ・ソフィア(Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía:ソフィア王妃芸術センター)など見どころが満載です。美術好きにはたまらない町といえます。
トレド(Toledo)
ミラドール・デル・バジェ(Mirador del Valle:トレド展望台)
最後にご紹介するトレドは、スペインの旧都です。マドリードからバスで1時間ほどの場所にあります。町並みすべてが世界遺産登録され、町のほとんどがタホ川に囲まれた、まさに自然の要塞都市です。特にこの展望台から眺めるトレドの町は、まるで天空に浮かぶ城塞のように幻想的で、思わず立ち尽くしてしまうほどでした。夜間は町の明かりでライトアップされ、更に美しさを増すそうです。
「もしスペインに1日しか居られないのなら、迷わずトレドへ行け」という言葉がありますが、今ならこの言葉の意味がよく分かります。それくらい、感動する魅力がトレドにはあると感じました。
いかがでしたでしょうか。すっかりスペインの虜になってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の記事でご紹介したのは、あくまで私が訪れた場所のみ。スペインにはまだまだ美しく感動する風景が数多く眠っています。スペインの良いところは、地域によって文化や様相が異なり、どこを見ても飽きないところです。スペイン語自体も地域によって全く違って聞こえるため、スペインを歩いていても違う国を旅行している気分を味わうことができます。
コラムだけでは語りつくせない魅力がたくさんある、私の大好きなスペインという国を、この記事をお読みいただいたすべての方に愛していただけたら非常に嬉しいです。今度は皆様が新たなスペインの魅力を発見して、このコラムの続きをぜひご自身の中で作っていってください。
長い間、最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。また、どこかの記事でお会いできることを楽しみにしております。¡Hasta luego!(アスタ・ルエゴ!:ではまた!)
※1…第1の都市はマドリード、第2の都市はバルセロナです。
※2…キリスト教徒による国土回復運動。1492年にグラナダが陥落し、終焉。
※3…スペインなどの一部のヨーロッパでは、古代の遺跡や戦時中の防空壕が地下に埋まっていることから、地下鉄の整備を制限していることがあります。
ライター:NANA
東京都八丈島出身。趣味は読書とお散歩で、旅行雑誌を読んで行った気分になるのが好き。スペインの好きなところは、一瞬一瞬を楽しむことに全力を注ぐスペイン人の生き方と、美味しい食べ物。スペインのアリカンテ大学(バレンシア州)への留学体験記を執筆中の、フラメンコを踊れるライター。
観光、文化に関する和文・英文ライティング(記事執筆)、多言語翻訳を随時受け付けております。
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