「アロセリア・ル・アルゥス(Arrocería L`arruzz)」のパエリア
スペインに旅行に行く際、食をメインの目的に考える方は多いのではないかと思います。そう、スペインは言わずと知れたグルメ王国!お米や魚介をたくさん使用するスペイン料理は特に日本人の舌にとても合うそうです。この記事では、そんなスペイン料理をもっと楽しむための秘訣やお店でのマナー、そしてアリカンテのおすすめ名店をご紹介していきます。
レストランとバルの違い
スペインでの外食というと大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつはレストランで、客一組に対しテーブル席が割り当てられ、主に数人で取り分けて食べる大皿の食事が提供される形式です。もうひとつはバルで、こちらではお酒をメインで楽しむことができ、小皿に盛り付けられたタパ(Tapa:おつまみ)が小さめのテーブル席やカウンター席で提供されます。
最近では日本でも、「スペインバル」の看板をよく目にすると思います(私もアルバイトしています)。日本のテレビでも頻繁に取り上げられる、色とりどりのピンチョス※1(Pinchos)をカウンターにずらっと並べた光景がおなじみのスペインバルは、多くの観光客や現地の方からの人気を誇っています。
スペインのレストラン・バル事情
異国で初めてレストランやバーに入るときって、なんとなく緊張するのは私だけでしょうか。「席には勝手につくべきなのかな」「料理の注文って順番とかあるのかな」「お会計ってどこでするのかな」など、頭を常にはてなが駆け回ります。日本でも外食の際の作法があるように、各国様々なテーブルマナーが存在します。スペインではそこまで厳格ではないものの、入店からお会計までの一通りの流れがあります。それぞれレストランとバルで少々異なるため、比較しつつご紹介します。
- 入店
- 注文
- お会計
- 退店
基本的にテーブル席であるレストランに行くときは、予約を済ませてからだとスムーズです。予約していない場合はお店に入ったら、ウエイターに人数を伝えて、テーブルを伝えられるまで待ちましょう。
バルの場合は、大抵入店したら「オラ!(¡Hola!)」と一言挨拶し、勝手に席を探して座ります。そのうちウエイターが飲み物を聞きに来ます。カウンター席の場合は、そのままバーテンダーにオーダーしても大丈夫です。
また、カジュアルなレストランだと、バルのように勝手に座って注文を聞きに来るのを待つこともあります。
レストランの場合は、テーブルに食事のメニューと飲み物のリストが置かれていることが多いです。まずは一皿目と二皿目を注文しましょう。それぞれ一皿目は前菜やスープ、パスタなどを、二皿目はお肉やお魚などのメイン料理を頼みましょう。コースの食事でなくても、最初からこういう風に頼むのが一般的です。なお、デザートは最初の段階では注文しません。ウエイターが食後にまた注文を聞きに来てくれます。飲み物はどのタイミングでオーダーしても大丈夫ですが、頼まなかったら聞かれると思います。
バルでは、お酒を楽しむのがメインなので、入店したらまず飲み物の注文です。注意したいのが、ほとんどのお店にドリンクのメニューがないということ。「基本的には何でも置いているから好きに頼んで」、というのがスペインバルのスタイルです。そのため、事前にスペインで一般的なお酒の種類や銘柄を知っておくといいでしょう。基本のお酒については以下でご紹介します。タパはバーカウンターに並んでいるものや、メニューから選びます。なお、スペインではメヌゥ(Menú:メニュー)というとコース料理のメニューリストを指します。タパなどが書いてあるものを見たい場合は、「ラ カルタ ポルファボール(La carta, por favor:アラカルトメニューをください)」とお願いしましょう。
レストランの場合はデザートの注文後にウエイターが伝票を置いてくれるか、こちらから会計時に声をかけます。テーブルでの会計が基本です。声をかける際は、「ラ クエンタ ポルファボール(La cuenta, por favor):お会計お願いします」と言いましょう。
バルの場合も、会計の流れは同様ですが、レストランと違ってごちゃごちゃ立て込んでいるので、中々ウエイターが捕まらないことも……。しかし、スペインはそういう国なのです。全然来る気配がなくても、気長に待ちましょう。すれ違う店員さんに「メ コブラ?(¿Me cobra?:お会計いいですか?)」と聞けるとグッドです。先ほどの「ラ クエンタ」も正しいですが、丁寧な表現なので、日本でいう下町の居酒屋的なバルでは少し浮くかもしれません。忙しい人気のバルでは、ウエイターにテーブルがあらかじめ割り振られており、オーダーから会計まで担当してくれることもあるので、最初に注文したウエイターを覚えておきましょう。
レストランでもバルでも、会計後は身支度をして席を立って大丈夫です。スペインではチップは義務ではないので、払わなくても問題ありません。もし、ウエイターのサービスが良かったので払いたいと思った際は、会計後のおつりが乗ったお皿に残していくとスマートです。カード払いのときも同様です。なお、レストランではカードが使える場合がほとんどですが、バルは現金のみの扱いが未だ多かったりします。多少の現金は持ち歩くのがベターです。「グラシアス!(¡Gracias!:ありがとう!)」と大きな声で伝えてから去ると良いでしょう。
スペインのお酒
お店にドリンクメニューがないことが多いスペインで、まずは最初の一杯に参考までにいくつかのメジャーなお酒をご紹介します。
・セルベッサ(Cerveza)…ビールのこと。迷ったらとりあえず「カニャ(Caña:小ビール)」というと、ウエイターが樽から注いでくれます。スペインビールは銘柄がたくさんあるので、詳しい方は指定してみるといいと思います。また、大きいジョッキサイズは「ハラ(Jarra)」もしくは「ピンタ(Pinta)」などと言います。瓶のままほしいときは「テルセロ(Tercero:3分の1という意味なので330㎖)」です。
・ビノ(Vino)…ワインのこと。それぞれ赤が「ティント(Tinto)」、白が「ブランコ(Blanco)」と言います。スペインはブドウの生産が世界3位のワイン大国なので、こちらも種類がたくさんあります。
・コクテル(Cóctel)…カクテルのことです。こちらも無限に種類がありますが、メジャーなものだと、「サングリア(Sangría)」やサングリアを炭酸で割った「ティント・デ・ベラーノ(Tinto de verano)」、ビールのソーダ割りの「クラーラ(Clara)」などがおすすめです。
もし、お酒が飲めない場合は、もちろんソフトドリンクもあります。コーラやファンタ(レモンかオレンジ)のほかにも水がありますが、有料でかなり高額です。また、アグア(Agua:水)を頼む際には炭酸入りかどうかを聞かれるので、いる場合は「コン・ガス(Con gas)」、いらない場合は「シン・ガス(Sin gas)」と答えましょう。注文はすべて「○○、ポルファボール(Por favor:○○お願いします)」と言うと通じます。
アリカンテ一押しの名店集
【アロセリア・ル・アルゥス(Arrocería L`arruzz)】
今回の記事トップを飾るパエージャ(Paella:パエリア)の写真は、アリカンテ中心街のルセロス駅近くの米料理専門店「アロセリア・ル・アルゥス」のものです。アロセリア※2(Arrocería)は米メインの専門店の意味で、こちらのパエリアは地元の方にも大人気の名店です。おすすめは平日のランチコースで、前菜とメインのパエリア、デザートとワンドリンク付きで16.95€(約2,030円)※でした。2階のレストラン席は雰囲気も良く、低価格でかなりの量の食事を楽しめたので、大満足でした。1階はバーカウンターもあったので、カジュアルに楽しむこともできそうです。
前菜のじゃがいもと目玉焼きのグリル—茸とフォアグラソース掛け—
【セルべサリア・サント・バリオ(Cervecería Santo Barrio)】
以前にも写真を掲載したこちらのバルは、絶品のスペイン風サンドイッチ「ボカディージョ(Bocadillo)」の小さい版、「モンタディート(Montadito)」が有名です。ここのモンタディートは、メニュー名として人の名前がついているのが特徴です。その中でも「イヴァン(Iván)」というサンドはスペインのタパの大会でグランプリを獲ったことがあるのだとか。牛のロースとルッコラとクルミのサンドに、フォアグラソースと「トゥロン※3(Turrón:アリカンテの伝統菓子)」のソースがかかっています。頬張ると口の中が幸せいっぱいになる一品です。年中晴れているアリカンテなので、テラス席で爽やかなティント・デ・ベラーノと一緒にどうぞ。価格はモンタディートひとつで2.4€(約290円)です。場所は旧市街への入り口、サン・ニコラス大聖堂の近くです。
イヴァンとティント・デ・ベラーノ
スペイン料理以外にも
【レモングラス(Lemongrass)】
長く滞在するとすこしアジアンなテイストも欲しくなってくるのではないでしょうか。こちらの「レモングラス」はアリカンテのみでなく、マドリードとバレンシアにも店舗があるタイ料理店です。おすすめは自分で具材をカスタマイズできるパッタイ(タイ風焼きそば)です。値段も6.5€(約780円)~とお得で、何しろボリューミーです。米料理も充実しており、辛さが選べるので、老若男女、国籍問わず人気のお店です。場所もビーチの近くの人気遊歩道、「エクスプラナダ(explanada)」沿いにあるので行きやすいと思います。
左下・右上がパッタイ、左上がタイチャーハン、右下がガパオライス
【リヴァンチ・ジェラート・ディ・シチリア(Livanti Gelato di Sicilla)】
最後にご紹介したいのがこちらのジェラート屋さんです。アリカンテは一年を通してとにかく暑いので、アイスの消費量が尋常ではありません。そこかしこに「エラデリア(Heradería:アイス屋)」がありますが、こちらのジェラートはスペインのアイスコンテストで3位に入賞したことのある折り紙付きお店。砂糖は使用しておらず、果物やはちみつの甘さでのみ調味したナチュラルなイタリアンジェラートが楽しめます。場所が少し分かりづらいですが、旧市街の中にあり、いつ行っても人がたくさんいます。言えば試食もさせてもらえますし、大きさも選べるフレーバー数もバリエーションがあるので何回でも訪れたいお店です。
ショーウインドウのジェラート一部(実際にはこの3倍くらい種類があります)
いかがでしたでしょうか。スペイン旅行の際にぜひ参考にしていただけたら嬉しく思います。また、アリカンテには他にもたくさんのレストランやバル、カフェなどがありますので、ぜひ一度足を運んでみようと思っていただけたら幸いです。
次のコラムでは、アリカンテの歴史と観光名所の「あのお城」について詳しく載せていけたらなと思います。また次回お会いしましょう。
※価格はすべて1ユーロ=120円で換算しています。レートは変動する可能性があります。
※1ピンチョス…日本語で小さな串という意味で、その名の通り小さな串に刺さった一品料理のことを指します。大抵は薄いバゲットの上に、魚の酢漬けやポテトサラダ、お肉などが串で留められて出されます。低価格でおつまみによく食べられ、串の数でお会計が決まります。スペイン北部バスク地方のサンセバスチャン発祥の料理です。
※2…スペイン語で「〇〇ría」ときたら、何かのお店かなと推測してみてください。例えば米料理なら「アロス(Arroz:米)」にríaがついて「アロセリア(Arrocería:米料理店)」、アイスなら「エラド(Helado:アイス)」なので「エラデリア(Heladería:アイス屋)」です。
※3トゥロン…スペインの伝統菓子で板状のアーモンドヌガーです。発祥はアリカンテの「ヒホーナ(Gijona)」という村で、そこに大きな工場があります。お土産として年中流通していますが、本来はクリスマスのシーズンに食べられるお菓子です。
ライター:NANA
東京都八丈島出身。趣味は読書とお散歩で、旅行雑誌を読んで行った気分になるのが好き。スペインの好きなところは、一瞬一瞬を楽しむことに全力を注ぐスペイン人の生き方と、美味しい食べ物。スペインのアリカンテ大学(バレンシア州)への留学体験記を執筆中の、フラメンコを踊れるライター。
観光、文化に関する和文・英文ライティング(記事執筆)、多言語翻訳を随時受け付けております。
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